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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
「おお、憶えているぞ。何と申しても、そなたは何も要らぬの一点張りであった。しまいには、庭の女郎花を摘んでも良いかと申して参ったな」
 嘉宣の口調はまるで、過ぎ去ったはるかな昔を懐かしむかのようだ。実際には、あのやりとりを交わしたのは、ついひと月ほど前のことなのに、彼にとっては随分と過去のように思えるのだろうか。
「あのお約束、まだ申し上げてもよろしいのでございましょうか」
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