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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第5章 【参】
 嘉宣は何を考えているのか、手枕をして天井を眺めている。
 その感情の窺えぬ瞳を見つめ、橘乃は嘉宣の胸に頬を押し当てる。
「さようでございましょうか。少なくとも私もつい最近まではそのように思うておりましたれど、つい不安になってしまうのでございます。このままでは私たちの子が家督を得るどころか、生命さえ失ってしまうのではないかと」
「―そのようなことがあるはずもなかろう」
 返ってきた嘉宣の声は心もち低かった。
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