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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
 ぎりぎりのところで、最愛の男の生命だけは守りたい。それが橘乃の最後の願いであった。
「判り申した。その言葉、確かに承り、皆に伝えましょう」
 玄馬は頷くと、深々と頭を下げ部屋を出ていった。
 磨き抜かれた廊下は森閑として、脚許から冷気が伝わってくるようだ。玄馬は先刻の橘乃の凜とした佇まいを思い出し、今更ながらに感嘆した。
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