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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章  【四】
 浪江が再びハッとした表情になった。
「お方さま―」
 橘乃がそっと頷く。浪江は堪りかねたように顔を覆って部屋を出ていった。
 浪江がいなくなり、再び静寂を取り戻した部屋の中、橘乃は一人端座する。
 この部屋に囚われの身となってから、白小袖しか着ることは許されなかった。
 永の旅立ちにはふさわしい装束だ。
「それでは、お先に参ります。殿」
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