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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第6章 【四】
「橘乃?」
思わず愛する女の名を呼んだ嘉宣を、玄馬が不審げに見つめる。
「殿、どうかかなされましたか?」
「いや、橘乃の声が聞こえたような気がしたのだ」
その応えに、玄馬がハッとしたように身じろいだ。どうも、今日の玄馬は不自然だ。態度や物言いがぎごちない。幼少の頃から身近にいた玄馬は、嘉宣にとっては近しい存在だ。
ちょっとした変化まで、よく察知できるのだ。
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