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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第2章 【序章】
不思議なものだ。こうして見ると、庭は刻一刻と変化しているのがよく判る。昨日までさほどに色づいていなかった葉が一晩明けて眼にしたら、見違えるほどに真っ赤に色づいていたということもないわけではない。
橘乃と共に庭を眺めるようになって、嘉宣は初めて四季のうつろいを知った。桜の花片が舞う春の空気のしっとりとした潤みや夏の陽に照り映える緑の楓のきらめき、天人が刺繍を施したような秋の花々の彩り、更には穢れを知らぬ雪の真白(ましろ)な眩しさ。
橘乃と共に庭を眺めるようになって、嘉宣は初めて四季のうつろいを知った。桜の花片が舞う春の空気のしっとりとした潤みや夏の陽に照り映える緑の楓のきらめき、天人が刺繍を施したような秋の花々の彩り、更には穢れを知らぬ雪の真白(ましろ)な眩しさ。