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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第2章 【序章】
 自然を眼だけでなく、匂いで、膚で触れ感じることを、あの女―橘乃が教えてくれた。
―こうしていると、橘乃、お前と共に過ごした焔のようなひとときが嘘のようだ。
 嘉宣は心の中でそっと最愛の女に呼びかける。あれはいつのことだったか、橘乃と二人でこうして廊下に座り、飽きることもなしに庭を眺めた。
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