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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
 あの方は、金盞花を随分と気に掛けていらっしゃるようだった。この季節になれば、割とどこにでも見かける花なのに、何故か生まれて初めて見るように眼を瞠っておいでだった。
 そう、あの時。
―そなたが活けたのか?
 深い声で問われた時、心が、身体が震えそうになった。何故、この男(ひと)は、こんなにも自分の魂を揺さぶるのか。橘乃には皆目見当もつきかねたけれど、あの一瞬であの男は橘乃心に棲みついてしまったのだ。
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