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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
「私は構わぬ。橘乃さえ側にいてくれれば、良い。たとえ、そなたの心が他にあろうと、いつまででも待つつもりだ。たとえ未練だと嘲笑(あざわらわ)れようと、私は幼い頃からそなただけを見てきたのだ。今更、そなた以外の女を妻に迎えるつもりなどない」
 初めて耳にする幸之進の言葉だった。もっと早くにその言葉を聞いていたら。否、多分、自分の気持ちはそれでも変わらなかっただろう。たとえその前に誰と出逢っていたとしても、傷ついた手負いの獣のような眼をしたあの男に魅せられたに違いない。
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