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妖婦と呼ばれた女~哀しき恋歌~
第3章 【壱】
「申し訳ございません」
 橘乃は深々と頭を下げた。
 幸之進が悄然と肩を落として去ってゆく。昔から、がっかりしたときには必ず右肩を心もち下げるようにして歩くのが幸之進の癖だった。互いに兄と妹のようにして育ち、今日という日まで幸之進の妻になるのだと信じて疑っていなかった。だけど、運命の歯車はもう回り始めた。
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