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【Jazz Bar『Dance』 作品メモ】
第3章 花火の夜(短編集)
掬い上げるようなキスに呼吸を乱されながら、目を閉じた真菜は小鳥遊の背中に指を回す。

明かりに照らしだされ、ともすれば外の沿道からも見えてしまうかもしれない部屋の一角で、恥じらいながらも自分を止めようとしない真菜の指に、小鳥遊の口付けが濃厚になり、舌先が雄弁に動いていく。

重なった唇の合間から、時折濡れた音が溢れ、真菜の息苦しそうな呼吸が漏れる。

それでも後頭部に回した手を緩めずに、何度も、その唇を啄んでは、甘く変わっていく空気の感触を、小鳥遊は楽しんだ。

「真菜…」

「……ぁ」

おでこをつけたまま上目遣いで覗き込むと、潤んだ瞳とぶつかる。

離したくなくなる。

綺麗な瞳だ。

「何で、泣きそうなの」

笑い混じりに尋ねると、真菜が困ったように視線を斜め下に逃した。

頬が赤らんで見えるのは、キスのせいだけじゃないだろう。

小鳥遊の予測を裏付けるように、真菜は一瞬、恥ずかしそうに彼の顔を見つめれば、目元までふわりと赤くしながら唇を震わせた。

「幸せ、だから…」

恐る恐る告げられた言葉が可愛すぎて、骨抜きになる。

「先生が、好き―――」

声も聞きたいし、キスもしたい。

この欲求を、同時に満たすことは、出来ないんだろうか。

絡まる舌に腰が熱くなる小鳥遊の背後で、自分の役割を律儀に果たしたスマートフォンだけが、遠慮がちにブルブルと震えていた。

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