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【Jazz Bar『Dance』 作品メモ】
第3章 花火の夜(短編集)
驚いて目を見開く詩織の顔を見つめ返して、庵原は自嘲気味に微笑む。

「気付いてたのか、気づいてなかったのかは、知らないけどさ。俺だって、……あの日、詩織ちゃんをウチに呼んだ時から、いろいろ考えてた。アイツが死んだってニュースを見た時、慰められんのは俺しか居ないじゃないかって考えて、便乗してるみたいで最低だと思ったし。それでも、詩織ちゃんがウチの前に居た時は、……変な期待が無かったって言ったら嘘になる」

静かに語っていた庵原の視線が、ふっと下に落ちると、彼は小さな溜息を挟んだ。

「抱いていいのか悩んだけど、結局、自分の望むとおりにしたし。ピル飲んでるのは知ってたけど、それでも、もっと……、違った方法もあったかもしんない。分かっていても、ずっと、……惚れてたからさ。それを言い訳にして、俺は、俺の好きなようにした。それは? 汚くないの?」

全て告白してから、庵原が切なげに詩織に視線を戻す。

常に飄々として、いつでも凪いだ空気を絶やさない彼の、意外な胸の内を明かされて、詩織は泣きそうな表情で庵原を見つめていた。

そして、ゆっくり首を横に振ったかと思えば、その動きは徐々に早くなる。

「汚くない。だって……、私だって、庵原さんを利用して―――」

「待った」

いつの間にか背もたれから身体を起こした庵原が、静かな口調で詩織の言葉を止めた。

「じゃあ、詩織ちゃんも汚くない」

「……」

「俺がしたことが汚くないなら、詩織ちゃんがしたことも、汚くない」

噛みしめるように一言一言を伝えながら、庵原が詩織の瞳を覗き込む。

「お互い、相手を利用した。……それでいいんじゃねーの? 人間なんて、多かれ少なかれ、互いを利用して支え合うんだから」

その言葉に、詩織の瞳が、ふっと潤み、目尻に涙が浮かんだ。

「俺としては…、”だから俺からも逃げたくなっちゃった”っていう結論に行かないでくれたら、嬉しいし、安心する」

笑いながら、庵原は立ち上がり、先程まで家族連れがいた柵の方へ歩み寄った。



その背中を、詩織が滲む視界に捉える。

あの背中に、何度、守られたんだろう。

今日だって、彼は、その背中に自分をかばってくれた。



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