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【Jazz Bar『Dance』 作品メモ】
第3章 花火の夜(短編集)
思わず溢れかけた涙を、上を向いて堪える詩織の耳に、庵原の、いっそ清々しい声が届いた。

「でもま、そういや、そうだよな」

「……?」

不思議な言葉に、顔を戻すと、男が自分の方へ振り返るところだった。

白い街灯の明かりに照らされて、長めの金髪が揺れている。

「何となくセックスして、何となく一緒に住み始めて、何となく隣にいるけど、……ちゃんと言ってなかったもんな、俺」

ゆるりと微笑む庵原は、誘うような色気をまとい、艶めいて、BARでは決して見れない顔をしている。

頬が熱くなるのを感じる。

見惚れている詩織に歩み寄ると、庵原は彼女の前に跪き、細い手を両手で握りしめて笑いかけた。

「お前に惚れてる、詩織。……俺のもんになれ、身も心も、全部」

「……」

堪えたはずの涙が、胸の奥から込み上げた。

止められない雫は目尻から溢れて、火照った頬を撫でるように流れ、詩織の手を包む庵原の手の甲を濡らす。

泣き顔から目を逸らさないまま、笑みを深めた庵原が腰を上げ、詩織の隣に座ると優しく肩を抱き寄せた。

背中を撫でながら、反対の手で、その涙を拭い、そのまま顎を柔らかく掬い上げる。

「誰がお前をけなしたとしても、俺がお前を守るから」

前も言ったろ?

そう微笑み、庵原は詩織の唇に、啄むように口付けた。

丁寧で繊細なキスに、詩織の胸が締め付けられる。

そっと解けた口付けに、静かに瞼を持ち上げれば、細く綺麗な瞳と目が合った。



「詩織?」



伺うような声音に、詩織は涙目のまま微笑んだ。

微笑んで、小さく頷くと、庵原の胸に顔を預けて、その胸元にしがみつく。



「ありがと、……誠司」



嗚咽に消えそうな詩織の言葉に、庵原が目を閉じて深く息を吐きながら、詩織を抱きしめた。









早めの処置で足首の痛みも軽減した詩織を、

それでも抱き上げたまま、階段を降りると、

庵原はタクシーで二人の家まで帰宅した。



自宅に入って玄関の鍵を閉めた瞬間、

二人は、何かに吸い寄せられるように視線を合わせて

微笑みながら唇を重ねた。



その先は、また、別の話―――。







-Fin.-



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