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【Jazz Bar『Dance』 作品メモ】
第3章 花火の夜(短編集)
ほんとは、浴衣で花火を見て、手を繋いで、キスくらいしたいな、とか思ってた。

もっと言うなら、可愛い下着だって、新調してた。

でも、健二が体調悪いなら、私も我が儘は言っちゃ駄目かなって思ってた。

だって、私は健二の奥さんなんだし。

何より、健二のパートナーなんだもん。

結婚式の時に「病める時も」って誓いを立てたんだから、健二が辛い時は支えなきゃって思ってたし。



でも。



キスを仕掛けられた瞬間、色んなことが、一気に飛んで、ただ健二に触れたかったんだって感情が、急に胸の奥から沸き上がってきた。

多分、毎日でも触れたくて、毎日でも一緒に気持ちよくなりたくて、花火は、そのおまけだったのかもしれない。

だって、健二に触れられるだけで、こんなに蕩けそうな気持ちになってる。

なに、この感覚。

欲求不満みたいな、妙な気持ち。




「美月…」

「健二、だめ…。熱が…」

労いの言葉を言い訳にしながら、口付けの合間に緩く首を振る。

でも、本当に嫌がってないのも、長い付き合いだから全て見透かされてる。

やっと手首を解放した健二が、私の顔の両脇に手をついて、腰を跨ぐように四つん這いになった。

本当に病人なの?って聞きたくなるくらい、強い瞳で、私の顔の一点を、見つめてる。

互いのキスで、濡れたままの唇を。



健二の視線に首の動きがゆるやかに止まった。

いつの間にか、私も健二の口元を見つめてた。

その、濡れた唇が、ふっと動く。



「美月、一緒に熱くなってよ」



かすれた健二の声に、私の身体は、簡単に煽られた。



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