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夢見桜~ゆめみざくら~
第1章 夢見桜
互いの身の上話や生い立ちを話している最中、ふと吟の視線が桜の樹からやや離れた場所に吸い寄せられた。
「あの花―」
一馬が怪訝そうにその視線の先を追う。
「あれは都忘れではないか」
一馬の言葉に、吟は瞳を輝かせた。
「いつか、おっしゃいましたよね。私は桜の花が好きなのかと」
吟は微笑んだ。逝く春の陽差しを浴びて可憐に咲くひとかたまりの花は、都忘れであった。小さな紫色の可愛らしい花だ。
「都忘れには桜のようなあでやかさはないけれど、ひっそりと精一杯花開いているその姿に何となく心魅かれるんです」
吟の言葉に、一馬も納得したように頷く。
「なるほど、確かに華やかさはない花だが、一生懸命咲いているように見える」
一馬はしばし紫の可憐な花を見つめていたかと思うと、フッと笑った。
「あの花、お吟に似ているぞ」
揶揄するように言って、吟を見る。吟はその台詞に紅くなった。一馬の眼差しが頬に熱い。
「お吟は何にでも一生懸命だ。そんなところがよく似ている」
一馬の言葉に、吟は俯いて首を振った。
「一馬さまこそ、よく似ていらっしゃいます」
「俺が? 俺が花に似ているのか」
面白そうに問う一馬に、吟は慌てて首を振った。
「いいえ、花ではございません。村にいる私の兄によく似ていらっしゃるのです」
「兄―、村で百姓をしているというそなたの兄にこの俺が似ていると?」
一馬がハッとしたように吟を見た。
「あの花―」
一馬が怪訝そうにその視線の先を追う。
「あれは都忘れではないか」
一馬の言葉に、吟は瞳を輝かせた。
「いつか、おっしゃいましたよね。私は桜の花が好きなのかと」
吟は微笑んだ。逝く春の陽差しを浴びて可憐に咲くひとかたまりの花は、都忘れであった。小さな紫色の可愛らしい花だ。
「都忘れには桜のようなあでやかさはないけれど、ひっそりと精一杯花開いているその姿に何となく心魅かれるんです」
吟の言葉に、一馬も納得したように頷く。
「なるほど、確かに華やかさはない花だが、一生懸命咲いているように見える」
一馬はしばし紫の可憐な花を見つめていたかと思うと、フッと笑った。
「あの花、お吟に似ているぞ」
揶揄するように言って、吟を見る。吟はその台詞に紅くなった。一馬の眼差しが頬に熱い。
「お吟は何にでも一生懸命だ。そんなところがよく似ている」
一馬の言葉に、吟は俯いて首を振った。
「一馬さまこそ、よく似ていらっしゃいます」
「俺が? 俺が花に似ているのか」
面白そうに問う一馬に、吟は慌てて首を振った。
「いいえ、花ではございません。村にいる私の兄によく似ていらっしゃるのです」
「兄―、村で百姓をしているというそなたの兄にこの俺が似ていると?」
一馬がハッとしたように吟を見た。