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夢見桜~ゆめみざくら~
第1章 夢見桜
「はい、特にいちばん上の兄に―晃吉(こうきち)と申しますが、よく似ていらっしゃるように思います。村のいじめっ子に苛められて泣いてばかりいた私を庇ってくれた優しいお兄ちゃんです」
吟の瞼に、晃吉の笑顔が蘇る。優しい兄、頼もしい兄。兄は今、達者でいるだろうか。吟より一回りも年上だったから、今頃はもう嫁を貰っているだろう。ふいに懐かしさが堰を切ったように溢れ出す。
その時、吟は我に返った。一馬の顔が強ばっていたからだ。これまで見たことがないような怖い顔だった。
「一馬さま?」
窺うように呼びかけても、一馬は硬い表情のまま押し黙っていた。
「一馬さま、どうかなさいましたか?」
吟の瞼に、晃吉の笑顔が蘇る。優しい兄、頼もしい兄。兄は今、達者でいるだろうか。吟より一回りも年上だったから、今頃はもう嫁を貰っているだろう。ふいに懐かしさが堰を切ったように溢れ出す。
その時、吟は我に返った。一馬の顔が強ばっていたからだ。これまで見たことがないような怖い顔だった。
「一馬さま?」
窺うように呼びかけても、一馬は硬い表情のまま押し黙っていた。
「一馬さま、どうかなさいましたか?」