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夢見桜~ゆめみざくら~
第2章 哀しい現実
「そなたは始めから俺を兄のようにしか見てはいなかったというのか」
重い沈黙が二人の間に横たわった。
「俺は、そなたの兄ではないッ!」
突然、一馬が怒鳴り、吟はあまりの見幕に怯えた。
「お吟、お吟は俺を嫌いか?」
吟の怯えた様子に、一馬が心もち優しげに問う。だが、いかにも作りものめいた笑いは、かえって不気味にさえ思え、吟は余計に身を竦ませた。
「私は―」
吟は知らず知らず一馬から後ずさった。
怖かった。今夜の一馬は、あの優しい一馬とは全くの吟の見知らぬ男であった。
「お吟、たとえ、何があっても俺はそなたを離さぬ。尼になどさせるものか。そなたは俺のものになるのだ」
一馬が迫ってくる度に、吟は後ろへじりじりと追いつめられた。まるで心ない狩人に追われている野ウサギのようである。
ふいに一馬が吟の腕を掴んだ。
「―!」
吟が小さな悲鳴を上げる。続いて一馬の手が吟の帯にかかった。
「いや―、一馬さまっ、止めて。こんなこと、止めて下さい」
吟の眼から涙がしたたり落ち、畳を濡らす。
帯、腰紐を解いた一馬は、腰紐で吟の両手を上に持ち上げて縛った。
「いやっ」
吟は何もかもが信じられなかった。あの一馬が自分を縛りつけ、狂ったように裸にしてゆく。そのあまりの変わり様に、吟はひたすら怯えた。
ひんやりとした夜気が剥きだしになった裸の肩や胸にまとわりついた。溢れる涙を抑えることも拭うこともできず、吟は涙を流し続けた。
重い沈黙が二人の間に横たわった。
「俺は、そなたの兄ではないッ!」
突然、一馬が怒鳴り、吟はあまりの見幕に怯えた。
「お吟、お吟は俺を嫌いか?」
吟の怯えた様子に、一馬が心もち優しげに問う。だが、いかにも作りものめいた笑いは、かえって不気味にさえ思え、吟は余計に身を竦ませた。
「私は―」
吟は知らず知らず一馬から後ずさった。
怖かった。今夜の一馬は、あの優しい一馬とは全くの吟の見知らぬ男であった。
「お吟、たとえ、何があっても俺はそなたを離さぬ。尼になどさせるものか。そなたは俺のものになるのだ」
一馬が迫ってくる度に、吟は後ろへじりじりと追いつめられた。まるで心ない狩人に追われている野ウサギのようである。
ふいに一馬が吟の腕を掴んだ。
「―!」
吟が小さな悲鳴を上げる。続いて一馬の手が吟の帯にかかった。
「いや―、一馬さまっ、止めて。こんなこと、止めて下さい」
吟の眼から涙がしたたり落ち、畳を濡らす。
帯、腰紐を解いた一馬は、腰紐で吟の両手を上に持ち上げて縛った。
「いやっ」
吟は何もかもが信じられなかった。あの一馬が自分を縛りつけ、狂ったように裸にしてゆく。そのあまりの変わり様に、吟はひたすら怯えた。
ひんやりとした夜気が剥きだしになった裸の肩や胸にまとわりついた。溢れる涙を抑えることも拭うこともできず、吟は涙を流し続けた。