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夢見桜~ゆめみざくら~
第2章 哀しい現実
「その唇―」
一馬が恍惚とした表情で呟いた。一瞬、吟は何のことか判らず、大きな眼を見開いた。
「吟、そちは自分で気づいているのか? そなたの唇は淫乱だ。ひとめ見ただけでは虫も殺さぬような純情な娘だが、そなたの唇は毒々しいほどに紅い」
一馬の言葉は、ひどく吟の心を傷つけた。自分では全く自覚どころか考えたこともないことを指摘されても、どうしたら良いのか判らない。
「そんな酷(ひど)い―」
吟がまた泣きそうになった時、一馬が熱い吐息混じりに囁いた。
「それは男を誘い、惑わす魔性の唇だ」
刹那、一馬が吟の唇を荒々しく塞いだ。
息苦しさにもがき、くぐもった声を上げれば、それすら一馬にとっては悦びらしく、余計に熱い唇を押しつけてくる。吟の悲鳴は一馬の唇にことごとく吸い取られ、洩れるのは荒すぎる吐息ばかりであった。
「そなたは男を虜にする魔性の女だ―」
一馬が熱に浮かされたように呟く。
熱い感触が唇からうなじ、胸のふくらみへと徐々に降りてゆく。吟はそれでも逃れようと暴れた。だが、両手はまとめて縛り上げられ、自由は半ば奪われていては、抵抗らしい抵抗もできない。
一馬は自分を拒否し続ける吟にかなり苛立っているように見えた。まるで何ものかに憑かれたように、吟を荒々しく組み敷いている。
ふいに胸をきつく吸われ、吟は悲鳴を上げた。一馬は泣いて嫌がる吟には頓着せず、痛いほどに胸を吸う。その跡が痣となり、赤いしるしがまるで花びらのように吟の白い肌に散る。吟は次第に朦朧としてゆく意識の底で、いっそのこと死んでしまいたいと考えていた。
一馬が恍惚とした表情で呟いた。一瞬、吟は何のことか判らず、大きな眼を見開いた。
「吟、そちは自分で気づいているのか? そなたの唇は淫乱だ。ひとめ見ただけでは虫も殺さぬような純情な娘だが、そなたの唇は毒々しいほどに紅い」
一馬の言葉は、ひどく吟の心を傷つけた。自分では全く自覚どころか考えたこともないことを指摘されても、どうしたら良いのか判らない。
「そんな酷(ひど)い―」
吟がまた泣きそうになった時、一馬が熱い吐息混じりに囁いた。
「それは男を誘い、惑わす魔性の唇だ」
刹那、一馬が吟の唇を荒々しく塞いだ。
息苦しさにもがき、くぐもった声を上げれば、それすら一馬にとっては悦びらしく、余計に熱い唇を押しつけてくる。吟の悲鳴は一馬の唇にことごとく吸い取られ、洩れるのは荒すぎる吐息ばかりであった。
「そなたは男を虜にする魔性の女だ―」
一馬が熱に浮かされたように呟く。
熱い感触が唇からうなじ、胸のふくらみへと徐々に降りてゆく。吟はそれでも逃れようと暴れた。だが、両手はまとめて縛り上げられ、自由は半ば奪われていては、抵抗らしい抵抗もできない。
一馬は自分を拒否し続ける吟にかなり苛立っているように見えた。まるで何ものかに憑かれたように、吟を荒々しく組み敷いている。
ふいに胸をきつく吸われ、吟は悲鳴を上げた。一馬は泣いて嫌がる吟には頓着せず、痛いほどに胸を吸う。その跡が痣となり、赤いしるしがまるで花びらのように吟の白い肌に散る。吟は次第に朦朧としてゆく意識の底で、いっそのこと死んでしまいたいと考えていた。