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夢見桜~ゆめみざくら~
第3章 夜の哀しみ
~夜の哀しみ~
その夜を境として、夜毎、一馬の陵辱は続いた。足腰が立たないほどに一晩中責め続けられることも珍しくはない。意識を手放した吟を一馬は執拗に責め立て、幾度も貫いた。彼の吟への執着ぶりは傍から見ても異常としか見えない。
吟は、いつしか感情(こころ)を殺すようになった。笑わず、泣きもせず、ひたすら自分を固い殻の中へ閉じ込めた。そうすることでしか、十六歳の少女は正気を保つことができなかったのだ。一馬の常軌を逸した毎夜の責め苦にも、吟はひたすら乱れまいとした。だが、逆にそれが一馬の嗜虐心を煽っているとは、吟は気づいていない。
昼間、吟は自室で一心に石の仏を彫った。庭に落ちている石を拾ってきて、鑿(のみ)と小さめの金槌で器用に仏像を彫るのだ。寺にいた時分も、吟は暇を見ては石仏をつくっていた。
吟が一馬のものとなってから、ひと月が過ぎていた。吟の部屋の障子はすべて開け放ってある。縁越しに漸く色づき始めた紫陽花が見えた。
「何をしている」
突然、一馬の声がして、吟は身を固くした。一瞬、一馬を見る瞳に強い怯えが走った。
だが、つとめて無表情になる。一馬は吟が咄嗟に後ろ手に隠した作りかけの石仏を有無を言わせず取り上げた。
「こんなものを作っているのか」
一馬は小さな石の仏を手にとって、色んな角度からしげしげと眺めた。一馬の大きな手のひらの上では、小さな仏が更に小さく見える。
「そちが先日、俺にねだり事をするゆえ、珍しきこともあるものだとよう覚えておったが、まさか、あの折、ねだられるのが庭の石だとは思いもせなんだ」
その夜を境として、夜毎、一馬の陵辱は続いた。足腰が立たないほどに一晩中責め続けられることも珍しくはない。意識を手放した吟を一馬は執拗に責め立て、幾度も貫いた。彼の吟への執着ぶりは傍から見ても異常としか見えない。
吟は、いつしか感情(こころ)を殺すようになった。笑わず、泣きもせず、ひたすら自分を固い殻の中へ閉じ込めた。そうすることでしか、十六歳の少女は正気を保つことができなかったのだ。一馬の常軌を逸した毎夜の責め苦にも、吟はひたすら乱れまいとした。だが、逆にそれが一馬の嗜虐心を煽っているとは、吟は気づいていない。
昼間、吟は自室で一心に石の仏を彫った。庭に落ちている石を拾ってきて、鑿(のみ)と小さめの金槌で器用に仏像を彫るのだ。寺にいた時分も、吟は暇を見ては石仏をつくっていた。
吟が一馬のものとなってから、ひと月が過ぎていた。吟の部屋の障子はすべて開け放ってある。縁越しに漸く色づき始めた紫陽花が見えた。
「何をしている」
突然、一馬の声がして、吟は身を固くした。一瞬、一馬を見る瞳に強い怯えが走った。
だが、つとめて無表情になる。一馬は吟が咄嗟に後ろ手に隠した作りかけの石仏を有無を言わせず取り上げた。
「こんなものを作っているのか」
一馬は小さな石の仏を手にとって、色んな角度からしげしげと眺めた。一馬の大きな手のひらの上では、小さな仏が更に小さく見える。
「そちが先日、俺にねだり事をするゆえ、珍しきこともあるものだとよう覚えておったが、まさか、あの折、ねだられるのが庭の石だとは思いもせなんだ」