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ふにゃふにゃ
第1章 始まり

――あ、抱きつかれる。

世那と目が合った瞬間、そう思った慎太郎は自分でも驚くほどの早さで、世那の腕を掴み教室を離れた。

背中から雅史の『ちくしょー!』という叫びが響く。


「慎太郎さんから、連れ出して貰えるとは思いませんでした」


引っ張り歩く世那をチラリと見ると、目を輝かせ喜んでいる。

突発的な行動だったが、世那からしたら二人きりになる為に連れ出してくれた…となるのだろうか。


「抱きつこうとしただろ?」


「よく分かりましたね!はい、慎太郎さんを見たら堪らなくなって。さすがです」


別に、行動が読めたからと言って嬉しいわけじゃない。

ただ、皆の前で目立つ事をして欲しくなかっただけ。

自分のため、世那のために…


人気の少ない屋上手前の踊り場まで来ると、ここぞとばかりに世那は慎太郎の腕に絡んだ。


「……俺、まだつき合うとか返事してないけど、本気?」


「本気です!私、慎太郎さん以外の男性と、お付き合いしたくありません!」


「君のこと、好きという感情がまだないんだ。正直、手だけ好きな…フェチかと思ってる」


世那の絡ませた手に力が入る。慎太郎を見上げる瞳には、涙が浮かんできた。


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