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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
いつのまにか、エレベーターに乗っていた。
降りると、また少し歩く。
辿り着いた、モールの屋上駐車場。
舞子の車の後部座席のドアが開かれ、促された私は乗り込む。
隣に、舞子も乗り込んだ。
ドアが閉められ、同時に舞子が、よくがまんしたね、と私の頭を撫でてきた。
う……と、目をぎゅっとつぶる。
ぽろぽろと涙が零れた。
「……やだもう……何で……」
うう、と。
さっきから消えない光景に向けるかのように、私は呟いた。
「あの人絶対先生の彼女じゃん……!」
舞子が黙ってボックスティッシュを差し出してくる。
私はそれを何枚か取り、涙が次から次へと溢れてくる目元へと当てる。
その行為で、ううっ、とさらに涙が溢れた。
「いないって……っ、先生この前、彼女いないって言ったのに……」
「美波……」
そうやって、私は、そこでひとしきり泣いた。
何を言ったって、文句のような言葉がどんなに口をついて出たって、先生には彼女がいた――それだけが事実。それだけか、確かなことだった。