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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
はあっ、と息を吐きながら、ティッシュを目元から離す。
ぐちゃぐちゃになっているそれを捨て、また新しく何枚か取り、顔を覆う。
「……っく、う……嘘だったのかなあ……」
しゃくりあげながら、言葉にする。
「ん?」
舞子の相槌に、本当は彼女がいたけどいないって嘘をついたんだろうかと、途切れ途切れに口にした。
ん――……と舞子は少し何かを考えるような仕草をし、それから口をそっと開いた。
「……どうなんだろうね。
それはその人に聞かなきゃわかんないことだしさ」
……確かに、それはそうで。
また深く息を吐きながら、私は小さくこくこくと頷き、舞子の言葉を肯定した。
そしてまた、あの後ろ姿を。
その女性に向ける表情を、あの横顔を。
口元に浮かんだ静かな笑みを。
……差し出した手を、思い出す。