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水蜜桃の願い
第2章 先生と生徒
そして私の中に急にこみ上げてきた感情──衝動のままに口にしていた。
……今日はごめんなさい、と────。
「……何が」
先生はそう聞いてきたけど、本当はもうわかっているのだろう。
そんなふうに思える口調だった。
「何だろう……いろいろ?」
それでもそう答えれば、ぽんぽんと頭を撫でられる。
その優しさに促されるように、続けた。
「……なんか、変な焼きもち焼いたり……勝手に不安になったりして……面倒なことばっかり言ったなあ、って」
また、撫でられた頭。
ぐっと、そのままさらに引き寄せられ、両腕で抱き締めるようにされる。
「俺は別に面倒だなんて思ってないよ」
いや──と先生が何か思い出したかのように呟き、続けた。
「前だったら……そう思ってたかもな」
深く息を吐きながら。
「でも今は……どうしたら透子の不安は消えるかなってそれだけだったよ」
指先が、すっ……と私の髪をなぞる。
それがとても心地よくて。
「……なくなってるよ、もう」
うっとりと夢見るように答えた。
ほんとに? と聞いてくる声に頷く。
「先生がなくしてくれた。
……言葉と身体でそうしてくれたよ?」
透子……と、その優しい指先が唇にふれてきた感触に、またうっとりとさせられながら、目を閉じる。