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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
「また一年よろしくね、透子ちゃん」
その家の長男の家庭教師をしていたことをきっかけに、妹である彼女の指導もし始めて1年。
無事に志望高校に合格した時点でその役目は終わるはずだったのだが、彼女のたっての希望で、俺はもう1年……大学を卒業するまで、引き続き教えを続けることになった。
「よろしくお願いします!」
丸顔に大きな瞳が印象的なその子は、そう言ってぺこりと頭を下げ、すぐに戻した。
肩より少し長めの真っ直ぐな髪が揺れる。
へへ、と邪気のない笑顔を浮かべながら俺を見た。
「引き受けてくれてありがとう、先生!」
「どういたしまして」
その笑顔につられるように、俺も笑ってそう返す。