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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
そしてそれは、じきに訪れるであろう本格的な夏を既に感じさせるほど、朝から日差しの強い日のことだった。
「……先生、ちょっと相談していい?」
休憩中、彼女は不意に口にした。
アイスコーヒーの入ったグラスの中の氷を、くるくるとストローで回しながら。
「いいよ、何?」
きっと学校のことだろう──そう思って軽くそう返した俺に、彼女はほっとしたように口を再度開き言った。
「……学校離れちゃうと、付き合い続けるって難しいのかなあ」
視線はグラスへと向けたままで。
え……と、正直想像していなかった言葉に、すぐに反応を返せなかった。
からん……と氷が鳴る音だけが、静かな部屋に響く。
「どう思う? 先生。
男の子って、やっぱりそういうもの?」
促され、ああ……とようやく俺は、彼女の少し言葉足らずの内容を理解する。
「透子ちゃん彼氏いたんだ」
こくん……と頷いた彼女。
「中2の秋から付き合ってる。
だから……もうすぐ2年かな」
「そんなに前から?」
「へへ……驚いた?」
俺を見て、照れたように笑う。