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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
「……でも俺の場合や一般論を聞けば、それで透子ちゃんは納得する?」
え……? とその大きな目が俺を見つめた。
「彼の気持ちは彼に聞かなきゃわからないよ?」
きゅっと唇を噛み俯く彼女に
「聞くのこわい?」
そう言葉を続ければ、やはりまた、頷いて。
「……そっか」
その姿に俺は思わず彼女の頭に手を伸ばしていた。
なんだか無性に励ましたくなったから。
ぽんぽんと軽く撫でるようにすれば、でも……と小さな呟きが。
「ん?」
その顔を下から覗き込むようにして、続きを促す。
「曖昧な状態は、やだなとは思う……」
「うん」
「……自然消滅とか……そういうのもなんか、ちょっと」
「だよね」
はっきりさせたいけど、こわい──それがたぶん彼女の素直な気持ちだろう。
「透子ちゃん」
呼び掛けに顔を少し上げた彼女と視線を合わせる。
「こわいかもしれないけど、相手に聞かなきゃ何もわからないよ?
だから彼とちゃんと話をした方がいいと俺は思う。
透子ちゃんが思ってること、そのまま伝えてごらん?」
「先生……」
その瞳が不安そうに揺れている。
だから俺は再度、彼女の頭を撫でた。
「がんばれ」
笑って、そう励ましながら。