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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
「同じクラスの子なんだって」
「透子ちゃん────」
「……やっぱり、近くにいる子の方が強いってことだよね」
そして、苦笑いを浮かべた口元。
けれどシャープペンシルを持つその手は落ち着きがなく、何度も持ち変えてはぎゅっと握るようにする。
「そっか」
「……うん」
小さく頷いた彼女はまた饒舌に語り出す。
「でもね、そうだろうなって思ってたし……そんなショックじゃなかったよ?
しょうがないよね。やっぱり会えないのって大き────」
「透子ちゃん」
何でもないように口にする彼女に黙っていられず、思わず言葉を遮っていた。
彼女の顔が俺へと向けられて、その無理しているのが明らかにわかる表情に、手がまた自然に動いて。
「わかったから」
そう告げ、その頭を撫でたときだった。
彼女の表情が途端に崩れる。
上げていた口角は歪み、唇を噛むようにしたかと思うと俯いて。
……やがて聞こえてきた、震えを纏った溜め息。
そして、すん……と鼻をすする音。