この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
「ねえ、先生って彼女いるんでしょ?」
さっき彼女の母親が休憩時間に合わせて運んできてくれたコーヒー。
他愛のない話が一区切りし、少し冷めてしまっているそのカップを持ち上げたときだった。
突然彼女はそう口にし、え? と思わず聞き返した俺に、いたずらっ子のような目つきで笑う。
「いないよ」
苦笑いしながらコーヒーを口にし、正直に答えれば
「うそ! だってお兄ちゃん言ってたもん」
「は?」
思ってもいなかった言葉が返ってきて、つい素になってしまった。
「女の人と一緒に歩いてる先生を見たって」
「……マジで? いつ?」
「先月かなー。
きれいで大人っぽいひとだったって言ってたよ?」
にやにやと、なんだか得意気に笑う。
「先月……」
確かに女と会っていたけれど『彼女』ではない。