この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「美波」
舞子の優しい声。
だよね、と私の身体を撫でてくれるその指先に慰められながらも、たまらなく痛む胸。
そうして、私は先生にこんなに本気だったんだ、と、そのことをも今さらのように自覚してしまう。
「そんなに好きだったんだ」
そしたら、同じようなことを舞子にタイミングよく言われて。
はは……と、泣き笑いを浮かべた私は、そうみたい、と、それだけを続けた。
こんなにショックなのはたぶん……レッスン中の先生の態度を、あの笑顔を勘違いしてしまっていたからなのかもしれない――突然、そう思った。
見せてくれてた、爽やかな、わかりやすい笑顔。
大きなリアクションで、私の言動にいちいち反応してくれてた。
明るくて、楽しい先生。何かで落ち込んでいても、レッスンで先生に会えると思うと頑張れた。実際会うと、元気をもらえた。
考えてみたら、先生なんだから、生徒にフレンドリーに接するのは当たり前だ。
私以外の生徒にも、そうやっているに違いない。
私だけに向けられていた態度でなんかあるはずがない。
なのに私は、何か勘違いをしてしまっていたのかもしれない。
……いつからこんなに本気になってしまったんだろう。
そんな当たり前のことに気づけないまま、いつのまにかこんなにも先生を、私は。