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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
「……ばかだよね、私」
もしかしたら、彼女がいないって言ったのは、根掘り葉掘り聞かれるのがいやだったからなのかもしれない。
先生はそうやって、生徒とは……私とは、しっかり線を引いていたのかもしれないのに。
「ほんと、ばか」
そういうのに気づかず、勝手に舞い上がって、いつのまにか本気になってしまっていた。
そんな自分に気づいて、呆れてくる。
「美波」
舞子が、私の背中に優しくふれてくる。
宥めるように動かされる手。
「自分のことそんなふうに言ったらだめだよ」
ね、と……優しいその声色に、また、涙がこみ上げてきてしまって。
それでも、これ以上、優しい親友に心配をかけたくもなくて、必死で堪え、うん、と頷いた。
ありがとう。ごめんね――そう呟いた。
背中にある舞子の手が、ぽんぼんと2回、私の言葉に応えるように動く。
それから、その手はそっと離れていった。