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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
そしていつしか季節は冬へと移り変わる。
その頃俺は、入部しているE.S.S.の2年生の先輩と付き合っていることになっていた。
比較的仲のよかったその先輩に、好きになってもらえても誰とも付き合う気はないから断るのが疲れる──そうこぼしていたとき『じゃあ私たち付き合ってるってことにしたら?』と提案されたのがきっかけだった。
『そしたら告られることもなくなるかも?』と。
最初はさすがに躊躇ったものの、誰かを傷つけるわけでもないその関係に、どちらかに好きな人ができたら終わり──という約束をした上で踏み入れてみれば、それはとても楽なものだった。
セックスの経験があった先輩といつしかそうなっていったが、あくまでもそれだけだった。
身体だけの割りきった関係。
先輩が卒業して街を出てからも、時折会ってはそれを続けていた。
大学に入ってからも何人かとそうなったけれど、やっぱり誰とも付き合うつもりはなかった俺は最初からそう言っていたからか、特にトラブルになることもなかった。
彼女の兄が見たと言う、俺と一緒にいたという女性。
先月は久し振りに先輩から連絡があり会っていたから、きっとそこを見られたんだろう────。