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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


……たぶん、家に帰ったらまた泣いちゃうんだろうな。


舞子の運転する車の助手席で私は、外の景色を眺めながらそうぼんやりと思った。


明日、休みでよかった。
……我慢しないでいっぱい泣ける。


そんなことを考えていたら


「美波、今日はこのままうちに泊まらない?」


舞子が何でもないことのように言った。


「明日は私も休みだし。
お酒飲みながらいっぱい話そうよ」

「舞子……」

「私が失恋したとき、美波もそうやってくれたじゃん。
すごく嬉しかったんだ。だから」

「……っ、舞子……」


う……、とまた涙がこみ上げてしまった私に、舞子が慌てた様子で


「美波、まだ早い!
今からスーパー寄っていろいろ買うんだから! がまん!」


そんなふうに言うから、こくこくと私はまた頷き、乱れそうになった感情を押さえ込む。

はあっ、と息を深く吐けば


「美波は私に泣き虫ってすぐ言うけど、いい勝負じゃん」


そんなふうにからかう舞子の言葉に、つられるように笑ってしまった。
泣きそうな状態なのに、思わずそうなってしまった。



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