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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
そのとき、びくっ、と揺れた彼女の身体。
首をすくめるようにして、目を閉じて。
その、まるで何かに耐えてでもいるかのような仕種────。
……あ。
まずい、と思った。
彼女の反応から、ちょっとやりすぎたかもしれないと。
彼氏がいたはずなのに、触れられ慣れてないかのような反応。
この前まで中学生だった彼女……もしかしたら清い付き合いのままだったのかもしれない。
「熱はなさそうだね」
極力、何でもないことのように装い、手を離した。
ほっとしたかのように彼女は『だから大丈夫だってばっ』と言い、俺の背中に回り、まるで追い出すかのようにドアに向かって押す。
おとなしく、はいはいと部屋から出た。
廊下を歩き、まずったな……と思わず考えながら階段を途中まで降りたとき、気づいた。
……洗面所の場所がわからない。
勝手にあちこちドアを開けるのもなんだし、聞いた方が早いな。
それに何でもないかのように聞けば、少しだけ漂ってしまったあの気まずいような微妙な雰囲気も消えるかもしれない。
立ち止まったまま考え、その結論に至ったところで踵を返した。