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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
ドアをノックして声を掛けるも、やはり返事はない。
それでも微かに聞こえてくるのは……多分、泣き声。
小さく溜め息をつき、そっとドアを開けた。
視界に入ってきたのは、ベッドの上でタオルケットを頭からかぶり、小さくなっているのであろう彼女の姿。
必死で堪えているのが分かるけれど、漏れ聞こえてくる泣き声。
それに連動するように揺れるタオルケット。
室内に足を踏み入れ、彼女の近くに……ベッドに腰かけた。
ごめん、と口にしながらその膨らみに触れれば、びくん、とした反応が手に伝わった。
「まさか着替えしてたなんて思わなかったから……ごめん」
見られてしまった恥ずかしさでたまらないのだろう。
気持ちはわからないでもないけれど、『勝手にドアを開けるなんてひどい』といっそ怒りながら文句なり何なり言ってきてくれた方が対処は楽だったな、とつい思ってしまった。
とにかく、ここから出てきてもらわないことには────。