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水蜜桃の願い
第3章  記憶の中の彼女


ここで帰るのは無責任だろうか────。


自分に問いかける。


いや──そもそも俺は何もしてないのだから、無責任、と言われる筋合いはない。
でも泣いている生徒をそのままにして帰るのもどうなんだろうとも、思う。

なら、どうしたらいい────。



「も、やだ……」


俺と同様黙っていた彼女が、耐えきれないというかのように突然言葉をこぼした。
視線を向ければ、両手で顔を覆うようにしている。
……片手にはあの下着を握りしめたままで。


「……ごめん」


そんな姿を目にしたら、急にいたたまれなくなり、同じ言葉を繰り返す。

俺のせいではなくても、俺が関係あることは確かだ。
いや──やっぱり俺のせいなのか。
何だか自分でももうよくわからなくなっていた。

とにかく、俺がここにいる限り、彼女だってどうしたらいいか自分でもわからないだろう。


……やっぱり────。


「保護者のいない家にはやっぱりあがるべきじゃなかったな……」


そう……それがいけなかった。
いつもと違うこんな流れになってしまったのは明らかにそのせいだ。


「帰るよ」


きっとそれが今、俺のすべきこと。
それが一番いい。
今日のこのことはお互い忘れて。何もなかったかのようにまた────。


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