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水蜜桃の願い
第3章  記憶の中の彼女


「さっき何してきたの」


答えられないであろう問いをわざと口にすれば、案の定、え……? と戸惑った様子で聞き返す。


「下着こんなになるようなことしてきたんでしょ?」


俺を見つめたまま小さく首を振る。
何も……と呟いたその声は限りなく小さかった。


「何も? そうやって知らない振りしてるのはそっちじゃないの?」


今度は必死で首を振るその様子に、その口から意地でも言わせたくなる。
噛んでいる唇を開かせたくなる。


──悪趣味だな。


自分の中にあるそんな感情に気づき、そう自嘲したものの……もう、この部屋の雰囲気は、俺が『教師』に戻ることなどできないほどに妙な色を纏い始めていた。


「……いったい、何がしたいの」


どこまで彼女を追い詰めれば気が済むのか。
俺はいったい彼女に何を言わせたいのか。

さっき、俺の腕を掴んだ彼女。
抱きつくようにしてしがみついてきた、あの様子。
それを思えば、何をしたいかなんて誰が考えてもわかることなのに。

怒らない──? 躊躇う彼女に、何が言いたいかなんてわかっているのに、それでもわざと、促した。


「怒らないから言って」


そう……そんなふうに。


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