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水蜜桃の願い
第3章  記憶の中の彼女


……ぬるり、と。


「っやあっ」


びくん、と震えた彼女の身体。
明らかなその潤み。


「……どうしたの、これ」


指先に少し力を入れ、ぬめりをすくうように動かせば、ああ……と、艶めいた声を漏らし、ふるふると彼女は身体を震わせる。


「何でこんなになってんの」


ずっとこんなふうに濡らしたまま……そうやって俺と話を?

ぬち、とそこから離した指先。
先生……っ……と切なそうに彼女は囁く。

その、女の目。
俺を求める、潤んだ瞳────。


「そんな誘うような目で見るなって」


どんどんと色を帯びていく彼女の表情。
俺の知らないその顔を、この子はいったいどこに隠していたのか。


心臓が、早鐘を打っていた。


彼女の言動への戸惑い。
それはいつしか。


そう……欲情していた。俺も。
俺に勝手に欲情して、それをぶつけてきた彼女に。

無邪気な『生徒』から突然『女』に変わって……その表情にアンバランスなほどの色香を纏って、俺を誘っている彼女に。


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