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水蜜桃の願い
第3章  記憶の中の彼女


「……約束する。今日だけ。
あとはちゃんと生徒に戻るから……」


そして。
それが、彼女の選んだ答え。

何でも約束する──そう言って俺の腕にしがみつくようにする。

震えているかのようなその手。
縋るように俺を見つめる目は潤み、切なげに揺れていた。


「……お願い、先生……して、っ……」


そしてその絞り出すような涙声──思わず彼女の身体を抱き締めていた。

はあっ、と深く息を吐く。


胸中に渦巻く、それはやっぱり説明のできない衝動。


俺の背中に腕を回し、ぎゅっと縋りつくようにする彼女の耳元に


「誰にも言っちゃ駄目だよ。
……分かるよね?」


卑怯な言葉を囁いた。
それでもこくこくと頷く姿に、なんで何でも受け入れるんだよ──そんなふうに思う自分に戸惑う。

受け入れてほしいのか。
拒んでほしいのか。
もう、自分でもわからなくなっていた。

わからないのに、ふれあってしまったことで欲情はさらに加速していた。


ただの生徒のはずだった。
ただの教師のはずだった。

なのにそれらは今、意味のないただの記号になって。
引かれていたはずの線を、見えないのをいいことに踏み越えて。


──そうして、とうとう俺たちは。



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