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水蜜桃の願い
第1章 先生と彼女
数日後――――。
やってきた、レッスンの日。
あれから初めて先生と会う。
その日は、仕事が終わってからレッスンまでのあいだの時間、舞子と会う約束をしていた。
舞子が、誘ってくれたのだ。
きっと私の心情を察してくれてのことだろう。
素直に、嬉しかった。
英会話教室近くのカフェで軽く食事をしながら、他愛のない話をする。
仕事のこと、遊びのこと、そんないろいろな話を。
……けれど、舞子の目には私の姿がやっぱりどこか緊張しているように見えるのだろう。
程なく、これからのレッスンのことへと、それは変わっていった。
……大丈夫? 舞子の気遣わしげな言葉。
大丈夫――。そして私の返事。
あの日、たくさん泣いて。
舞子にいっぱい慰めてもらって、そうやって、ちゃんと失恋を受け入れた。
だから大丈夫――――。
舞子は、うん、と頷いて。
でも無理しちゃだめだからね、と付け加えてもくれた。
そしてレッスンの時間が迫り、私は舞子と別れ、そのカフェを後にする。
……そう、きっと大丈夫。
また、あらためて思う。
まるで自分に言い聞かせてるみたい、そんなふうにも少し思ってしまったけど。
そうやって思い込むことも大事なはず――そう自分の思考を肯定し、私は教室のドアを開けた。