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水蜜桃の願い
第1章  先生と彼女


毎週水曜の19時半からの45分間。
それが、私が先生とふたりきりになれる時。


時間になり、ドアが開いた。
片桐先生が入ってくる。

英語での挨拶をしながら見せてくれたのは、あの、白い歯を見せた爽やかな笑顔――――。


……なぜだろう。
一瞬にして私の心は波立ち、急に泣きたくなってしまった。

このまま45分間、普通でいられるのか。
喉が詰まったような感覚を覚え、それがまた、自分の中に生まれた不安を煽る。


それでも、無理矢理に唾液を飲み込み。
口角を上げ、挨拶を返す。


なんだか元気がないね? と先生が私の顔を少し覗き込むようにしてきた。


どくん、と胸が鳴る。


……そして、先生に本気で恋していたことに気づいてから会うのは、今日が初めてなんだということに今さらながら気づいた。


何が大丈夫なんだろう。
どこが大丈夫なんだろう。
私はどうしてそんなふうに思えたんだろう――さっきまでの自分の考えが甘かったと、そう思うほどに、もう……この狭いふたりだけの空間が私には、息苦しいものに思えて仕方なくなっていた。



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