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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
ぎりっ──と胸が軋むような感覚を覚えた俺は、衝動的に身体を倒して彼女の背中に覆い被さるようにした。
「……なに、泣いてんの……っ……」
彼女の耳元で、言う。
声をかけずにいられなかった。
そんな俺に彼女は、声を懸命に絞り出すかのようにして訴えてきた。
「せん、せっ……すき……好きだよお……っ……」
震えて、掠れたその声の直後、またこみ上げてきたのか、ふえっ……とその横顔をひどく歪ませる。
──わかってる。
そんなの、もうわかってるって。
ぎりぎりとさらに胸の軋む音。
そのせいだろうか──たまらなく苦しくなった俺は、身体を起こしてその彼女の華奢な身体をさらにがんがんと突き始めた。
「ひっ、っやあ────!」
悲鳴をあげるその唇からこぼれるのは、意味のない言葉。
それでいい。
俺の名前も──好きだなんて言葉も、もう言わなくて。
掴んだ腰が、汗で滑る。
彼女の身体から滲み出るそれと、俺の手の、それ。
もう、すべてがぐちゃぐちゃになっていくかのようだった。
身体も、心も──頭の中も。