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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
──それでも、次の指導の日はくる。
彼女はどんな表情で……どんな態度で俺を迎えるんだろう。
そして俺は、それにいったいどんな対応をするんだろう。
わからないまま、彼女の家に着く。
呼び鈴を押せば、ドアを開いたのは彼女の母親だった。
すみませんでした、と先週留守にしていたことに対しての言葉を口にされながら、促された家の中。
玄関から続く廊下。
少し離れた位置で、壁に凭れるようにしていた彼女が、先生こんにちは、と俺に笑いかけてきた。
それはいつもと同じ笑顔のように見えた。
「こんにちは」
つられたように微笑んで、俺も挨拶を返す。
「……部屋、先に行ってるね!」
そう言い残し、すぐに階段をかけ上がっていった彼女。
俺はその後ろ姿を少し目で追い、それから横にいた母親に、考えておいた『先週の指導内容』を報告する。
それから、彼女の部屋に向かった。
開けっ放しだったドアから中を覗くと、彼女は既に机に座っている。
「先生、今日はどこから?」
棚から取り出すテキストと、その、俺に向けた声。
けれどこっちを一切見ようとはしなくて。
唇をきゅっと結ぶようにして笑みを浮かべた横顔は、どこかぎこちない。