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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
──終わった。
その事実に、深く息を吐く。
そう……俺と彼女の、教師と生徒という関係はとうとう、これで。
彼女の家を後にした途端、沸き上がってきた様々な感情。
寂しい気持ちももちろんある。
2年間という年月を思えば、当然。
けれど同時に、どこかほっとしてもいた。
これでもう、彼女とは会わなくていいのだと。
彼女の感情は、俺の感情を乱す。
気づいていた。 もうそのことに。
あの出来事──そう、知らなかった彼女を知ったあの日をきっかけに、俺の中に生まれたものに。
家庭教師と生徒の関係。
それだけのはずだったのに。
それだけではなくなったことに。
……溜め息が漏れた。
必死で何もなかったかのように振る舞おうとし続けた彼女。
俺が突きつけた一方的な約束を、守ろうと。
最後まで、そうやって。