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水蜜桃の願い
第3章 記憶の中の彼女
「……っ、待ってっ」
女性が慌てたようにそう言った。
もっと話を聞きたいという意味かと、はい? と口にしながら顔を上げた。
真正面から目が合う。
今度は逸らされずにそのまま見つめられ、俺も笑顔で見つめ返した。
……美人だな。
あまり意識しない程度のそれでもよくわかった。
顎のラインの長さの短めの髪が、はっきりとした目鼻立ちによく似合っている。
今時の子という感じの、目元を少し強調しているかのような化粧。
あらためてよく見れば服装もきちんとしている。
もしかしたらこれから出掛けるのかもしれない。
ああ……今鳴っているこの電話はもしかして?
そんなことを思いながらも、感じていた。
なんだか今度はすごく見られてる気がすると。
さすがにちょっと戸惑い、口元に浮かべた笑みはそのままに、さりげなく目線を逸らしたとき。
ずっと黙っていた女性がぽつりと口にした、先生、という言葉────。