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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


「……なんか、いろいろ思い出すよね」


思わず、口にした直後だった。


……っ、と小さな呻きが聞こえ、見ると左手の指先を凝視する彼女の姿。


「え……切った?」


少し焦って声をかければ、今度はその指を咥える。

やっぱり切ったんだ──そうわかって台所に行き、驚いて俺を見た彼女の怪我した方の手首を掴む。

傷口を確認すると、すぐに赤くじわりとその場所が滲ませた血。
幸い、そんなに深くはなさそうで。

水道を出して、指を当てる。
しみたのか、彼女は咄嗟に手を引きかけたけど、許さず流水で洗い続けた。


──調子に乗り過ぎたな、と反省していたら、なぜか彼女の方が申し訳なさそうな態度で、大丈夫だからと俺の手から逃れようとする。


なんで?
──だって俺のせいだよね?


「俺があんなこと言ったからでしょ?」


右側にいる彼女に視線をちらりと向けそう口にした途端、かあっ、とその頬が赤らむ。
すぐに俯かれてしまったけど、長い睫毛が震えているのがわかって。


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