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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


……帰るにはいいタイミングかもしれないな、と思った。


今また、あんな変な空気になったらたまらない。
少し冷静になるべきだと。


思いもよらない再会がもたらした、嬉しさと、そして戸惑い。


彼女と再会し、また会えた──そう俺は思ったけれど、彼女は俺と再会してどう思ったんだろう。

俺と同じ?
それとも──もう会わないでいたかった?


……冷静に、考えるべきだ。
俺の気持ちも、彼女の気持ちも、いろいろと。


彼女に仕事に戻ることを告げ、よかったらまた連絡して、と言い、連絡先を知らないとの答えに携帯の番号を教えた。

あえて、彼女の番号は聞かなかった。
もし俺に会いたいと思っているなら彼女は電話をかけてくるだろう。
会いたくないなら、かかってはこない──単純だけれど、それで少しは彼女の気持ちが知れると思った。


……もちろん、俺の気持ちも。


彼女から連絡がきたら俺は嬉しいと思うのか。
こなかったらどう思うのか。
そしてそれは果たしてどんな意味を持つのか。

あのときなんで、また会えた──そんなふうに俺は?
抱き寄せようと思えば抱き寄せられる──そう思ってしまったのは?


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