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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


携帯に着信があったのはその日の夜。
すぐには出られず、後で確認した未登録のその番号に、彼女からだと思った。


翌日の昼に折り返し電話し確認すると、やはりそうで。
あらためてゆっくり食事でもどうかと誘えば、すぐにOKされた。

交わした少しの言葉。
その口調は無邪気で。

そう……ああなる前の彼女のそれに似ていて、まるで俺まで、その頃に戻ったかのような気持ちになる。



──自分がどうしたいのかわからない。



彼女には、会いたいと思う。
だから、こうして誘ったわけで。

けれど、なぜ会いたいと思うのか。
ただ、懐かしいのか。
また、昔のように楽しく話がしたいからなのか────。


10年前、俺は彼女の想いを拒んだ。

彼女は『生徒』で、俺は『先生』で。
恋愛対象として見てはいなかった彼女に、心と身体すべてで激しく求められたあのとき。
あれを境に、俺の中に生まれ始めた名前のわからない感情。
これは何? と自問しても、複雑すぎる感情は、答えをどこにも導けない。


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