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水蜜桃の願い
第4章 動き出した刻
初めての外での待ち合わせ。
会ったのは昼を一緒に食べるぐらいの短い時間。
それでも「なんだかまだ夢みたい」と彼女は言った。
はっと、自分の発言の意味に気づき、深い意味じゃなくて──と慌てたように続けるその姿が可愛いと思った。
そんな表情をもっと見たくてわざとからかえば、困りながらも言葉を返してくるその姿に頬が緩む。
やっぱり、彼女と話すのは心地いい──そんなふうに感じていたときだった。
不意に耳に届いた、俺に会えて嬉しかったというひとこと。
視線を合わせれば、頬を少し赤らめながらも彼女もちゃんと俺を見ていて。
きゅっ、と結んだ唇に、その緊張は現れていた。
俺がそう思っていたように彼女も思っていてくれたのだと知れば、やはり悪い気はしない。
だから、俺も──と、そう答えた。
嬉しそうに緩んだ口元。
隠すように深く俯いたその顔を、サイドから流れた髪が隠す。
勝手に手が動いていた。
指先で触れた髪。
少しすくうようにしてまた落とせば、そのさらさらとした流れ方。
また彼女の頬にかかっていくのが、なんだか、きれいで。
「似合うね」
思わず口にしていた。
可愛い、と。