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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


仕事に戻る時間になり、その日はそこで彼女とは別れたけれど────。



その後も、何度か会った。
いつも日中だったけれど、誘うたびに彼女は二つ返事で来てくれた。

そしてまた、俺たちは話をする。
他愛のない言葉を交わし続ける。
まるで、この10年の空白を埋めるかのように。


一度だけのあのことには俺も彼女も触れはしない。
けれど、お互い意識しているのは明らかだった。


……ずっと考えていた。
彼女の想いに気づいていながらも、知らない振りをし続けて。


彼女はもしかしてずっと俺を?
俺のことを想い続けていたんだろうか?


……そう思い、いやそんなわけ──と心の中で否定する。


10年は、長い。
ましてや彼女はあのとき16歳だった。
当然、それから何度も恋をしただろう。
俺のことは忘れていなかったかもしれないけど、再会でただ懐かしくなり、あのときの想いを思い出し、それに浸っているだけかもしれない。


だってそうだろ──たった一度寝ただけの俺を、ずっと好きでいてくれたのかもしれないなんてそんな都合のいい考え────。


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