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水蜜桃の願い
第4章  動き出した刻


……理由なんて、多分自分でももうわかっていた。
けれどまだ、どこかでそれを認めたくなかった。認めるわけにはいかなかった。


俺は自分のことはあまり好きじゃない。
自分が、女に対してはたぶんひどい男だっていうのは自覚してるから。

好きでもない女と付き合い、ちゃんと関係が築けないまま一方的に切って。
それからは、自分にとって楽な関係にばかり逃げた。
女=セックスする相手。
そんな、身体だけの関係ばかりを求めてきた。
好きだと言ってくれた相手を受け入れず、身体だけでいいなら──そんなふうに口にしたこともある。


10年前──俺は彼女にもひどいことをした。
あの必死な想いから、『教師』という肩書きを理由に逃げた。
一度きりでもいいって言うなら抱いてあげるよ──そんな態度で。
その代わり誰にも言うなと口止めまでして。
純粋に俺を慕ってくれていた彼女は俺の言葉をすべて受け入れ、従った。
さらに、あとは『生徒』に戻れだなんてつらい立場を強いて。


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